ナポレオンが好きだった歴史書 


ナポレオンは歴史好きであり、自身が作成した移動図書館の60冊以上を歴史書が占めていたと言われています。

ナポレオンは後に「アレクサンドロス、ハンニバル、カエサル、グスタフ(グスタフ・アドルフ)、テュレンヌ(フランスの大元帥)、オイゲン(プリンツ・オイゲン)、フリードリヒ(大王)の戦役を何度も何度も読むと良いだろう。それらをあなたのモデルにするのだ。これが偉大な指揮官となり、兵法を習得する唯一の方法である。」と伝えています。

ナポレオンはこのように兵法を習得しており、自身の体験を元に兵法を習得する方法を伝えようとしたのでしょう。

ナポレオンが好きだった「歴史書」には死と隣り合わせの戦場での指揮官の決断と行動が記されており、ナポレオンはそれを何度も読んで頭に思い描いて実践できるレベルにまで習得したのだと考えられます。

もしあなたが「勝ちたい」、「成功したい」と思っている方であれば、そのベースとなる「勝利(成功)する考え方」を習得するものとして「読み物としても面白い歴史書」はおすすめです。

これから紹介するものは、ナポレオンが実際に読んで好きだったものです。

プルタルコス「英雄伝」(Lives of the Noble Grecians and Romans)

「英雄伝」は幼少時からのナポレオンのお気に入りの歴史書でした。

ギリシャの英雄とローマの英雄を対比させるようになっているため「対比列伝」とも呼ばれています。

ナポレオンはこれを何度も読み返しており、ナポレオンの思考の形成に大きな役割を果たしていたと考えられます。

恐らく、ナポレオンは「英雄伝」を何度も読んで深く理解することにより、勝利する者(成功する者)の考え方や行動を身に着けたのでしょう。

成功者の考え方や行動を理解したい方、お子様などに成功者の考え方や行動を理解してもらいたい方におすすめです。

総勢46人の成功者の考え方や行動が掲載されています。

読んだ中ではちくま学芸文庫から出版されている物が読みやすいと思いましたので、それをご紹介します。

プルタルコス英雄伝 上 <ちくま学芸文庫>

プルタルコス英雄伝 中 <ちくま学芸文庫>

プルタルコス英雄伝 下 <ちくま学芸文庫>

アッリアノス「アレクサンドロス大王東征記(The Anabasis of Alexander)」、「インド(Indica)」

ギリシアの政治家・軍略家であるアッリアノスの著作はナポレオンが特にお気に入りだった歴史書です。

現存していないものが多く、その中でも日本語に翻訳されているものは、最も有名だと思われる「東征記」と「インド」のみです。

世界最高の戦略・戦術家の1人であるアレクサンドロス大王がどれだけの強い意志を持ち、どこまで考え、行動したのかがよくわかります。

恐らくナポレオンもアレクサンドロス大王がどのように大小様々な国々を征服していったのかを学び、強い意志と精密な戦略、行動力と勇気が必要だと感じたのではないでしょうか。

ナポレオンにとってアレクサンドロス大王は憧れだったのでしょう。

人が成長するに当たって「憧れの成功者」を学ぶことはとても大切です。

浮き沈みのある人生が書かれたものなら尚更です。

個人的な実感として、逆境の時、憧れの成功者はどのように考えて行動したかなどを思い浮かべ、粘り強く逆境に立ち向かえる考え方ができるようになれるかもしれません。

アレクサンドロス大王東征記 上 ―付インド誌 (岩波文庫)

アレクサンドロス大王東征記 下 ―付インド誌 (岩波文庫)

ポリュビオス「歴史(The Histories)」

古代ギリシアの歴史家であるポリュビオスの著作は「歴史」以外、すべて散逸しています。

ただ、この「歴史」が面白いです。

ハンニバルの父、ハミルカル・バルカの活躍した第一次ポエニ戦争から始まり、カルタゴが滅亡した第三次ポエニ戦争までを取り扱っており、ハンニバルやスキピオの時代(第二次ポエニ戦争)周辺のカルタゴやローマはもちろん、周辺国の事柄も記されています。

ハンニバルはイタリアに攻め込む時、「アルプス越え」をしており、ナポレオンも「アルプス越え」をしています。

ポリュビオスの「歴史」を深く理解したことにより、ナポレオンはハンニバルの戦術をオマージュできたのでしょう。

そしてその周辺国の事柄を知ることによって、戦いとは敵と味方の二元論ではないということも理解したのだろうと思います。

翻訳が良いのか、何といっても読みやすくてわくわくするのでおすすめです。

ナポレオンも最高の戦術家の1人であるハンニバルの戦いを心躍らせて読んでいたでしょう。

リウィウス「ローマ建国史(Ab urbe condita)」

プルタルコス、アッリアノス、ポリュビオスなどの歴史書はナポレオンが特に好きだったものであり、リウィウスの「ローマ建国史」もナポレオンのブリエンヌ軍事学校からのお気に入りでした。

後に作成したマホガニーの箱に入れられた移動図書館には、リウィウスの「ローマ建国史」やタキトゥスの「同時代史」、「年代記」などなど、多くの歴史書があったと言われています。

ローマ建国史はローマのロムルスとレムスの伝承の時代から始まり、ハンニバルの時代、カエサルの時代を経てアウグストゥス(オクタヴィウス)によって帝政が誕生するまでが網羅されています。

全142巻で構成されていましたが、現存するのは第1巻~10巻、第21巻~48巻です。

西洋古典叢書では2008年から順次出版し、1~6巻(第1巻~10巻、第21巻~25巻)と9巻(第31巻~33巻)までが販売されています。

これらの歴史書もナポレオンの思考と行動を形成する糧となりました。

あらゆる視点からハンニバルやカエサルなどを研究するナポレオンの姿勢が表れているのがわかります。

タキトゥス

ナポレオンはブリエンヌ軍事学校時代からタキトゥスの書籍を愛読しており、1809年に納品された移動図書館にタキトゥスの書籍を入れていました。

タキトゥスのすべての本を読んだと思われるナポレオンですがその中でもお気に入りだと思われるのは「年代記」と「同時代史」でしょう。

「年代記」は紀元14年のティベリウス帝の治世の始まりから紀元68年のネロ帝の自殺までのローマ帝国の歴史をまとめており、リウィウスの「ローマ建国史」の後の時代の歴史書であり、「同時代史」はネロ帝の時代が終わった後、68年から70年の間のローマ帝国内戦から始まり、96年のドミティアヌス帝の死までが記されている歴史書です。

ですが、「年代記は」三分の一が失われており、「同時代史」は68年~70年の間のローマ帝国内線と66年~74年の間の第一次ユダヤ・ローマ戦争周辺しか現存していません。

ナポレオンはローマ史を通して将軍として、そして統治者としての考え方や行動を理解したのだと考えられます。

同時代史 (ちくま学芸文庫)

最後に

ナポレオンはこうも言っています。

「将軍の能力は経験とすべての偉大な指揮官の戦役の研究によってのみ獲得することができる。グスタフ・アドルフ、テュレンヌ、フリードリヒ(大王)、アレクサンドロス、ハンニバル、カエサルも同じ原則に従って行動した。軍隊を集結させ、いかなる点においても脆弱にならず、重要な地点を迅速に制圧すること。これらが勝利を保証する原則だ。」

これは「戦争で勝利する原則」の要点を簡単に説明しつつ「過去の偉人を研究することの大切さ」を伝えようとしています。

この言葉は文言を変えれば管理職のある多くの職種に当てはめることができ、歴史書はそのベースとなり得ます。

あなたが成功(勝利)するために、多くの指揮官の決断を知ることができる「歴史書」をおすすめします。